39 ABS樹脂の特性と反り対策


3Dプリンタを購入して10カ月がたちました。

先日7個目のフィラメントを交換したので

10か月で7Kg以上造形した事になります♪

というわけで7Kgを費やして学んだABS樹脂の特性について紹介します。


家庭用3Dプリンタの素材はABS樹脂とPLA樹脂が殆どですが

 私はもっぱらABS樹脂派です。

 理由はABSの方が後加工がしやすいからです。

 但しABSはそれなりに特性があるので

 うまく使いこなすには工夫が必要です。

- 2013/07/21:公開 -



ABSの特性


【ABSの特徴はこんな感じ】


・PLAと比較すると融点が高い

・造形時に収縮し、反りや形状変化の原因となる。

  ・造形品はサンドペーパによるやすりがけが可能な硬度となる。

  ・アセトンで溶解処理が可能。

  ・プラスチック用塗料のノリが良い。



ABSの収縮について


ABSを材料に使っている人がほぼ必ず直面する問題に

  造形品の「反り」があります。

3Dプリンタ失敗例参照

これはABSという樹脂が持つ
収縮という特性に起因するのですが、
  次の様な要因により更に顕著になります。

  ①造形品の板厚差による収縮差

  ②冷却時間差

  ABSが収縮するのは宿命ですが、

  上記の要因を軽減する事によって
  ある程度造形の失敗率を
低減する事が可能です。





板厚差によるヒケ


例として、左図の様な形の造形があるとします。

  ABSの収縮率は要領によって一定なので
  板厚が厚いほど収縮率は高くなります。

  収縮率が高い程
材料が引っ張られる力が強くなります。

  この力に対抗する為にテーブルを加熱して
  造形物を固着させているのですが、

  固着力以上の力で引っ張られた場合に
  「反り」が発生します。

  板厚差をなだらかにする事で
  多少引っ張る力を軽減出来ます。
※収縮自体を止められるわけではありません。

  設計上可能ならこの点を考慮してモデリングするとよいと思います。



温度差による収縮


高さが高い造形に多いケースですが、
  急激な温度変化は引っ張る力を強くなります。

  左図のように
底面は最後まで温度が維持されますが、
  階層が上がるにつれて
ホットエンドから出力された樹脂は
すぐに固まるようになります。

  収縮率自体は変わらないのですが、
  この時の温度変化が急になると収縮スピードが早まり
  引っ張り力が強くなります。

  対策としては造形空間自体の温度を
  一定に保つ事
が有効です。

  造形エリアは断熱性のカバー等で覆うとよいと思います。※後述♪





ホットエンドの温度とABS


但しホットエンドの温度が高すぎると品質に影響が出ます。

 フィラメントは出力される時は液状で出力され
冷えると固まります。

  固まるまでは液体なので
温度が高すぎると固まるのに時間がかかり
  その分ダレたエッジの造形となります。

また積層面の段差が大きくなります。

逆に温度が低すぎると積層間の接着力が弱まり
  造形物の強度が低下し、剥がれの原因となります。

  またプリンター内の温度管理が適切でないと
  cold preventエラーの原因となります。

  cold preventは樹脂の射出だけ停止して
ホットエンドは移動し続けるので
本来造形される筈だった部分に樹脂が射出されず
造形が失敗します。

  造形時の気温・湿度、樹脂、造形物の形状によって
  最適な温度は異なるので何度も試してみるとよいと思います♪








反りの応急処置


 ちょっと小技です。

 ABSの場合軽い反りはプラモデル用の接着剤で
リカバリ
出来ます。

 やり方は、剥がれた個所に接着剤を塗布し
 上から硬いものでしばらく押し付けるだけです。

 造形がまだ少ないうちは
テーブルの温度が届く事と、
 プラスチック用接着剤に含まれるアセトンが
 ABSを適度に溶かしてくれます。

 さらに接着剤なので
 剥がれた造形物を
テーブルに強力に固着する事が出来ます。

 今の所1cm程度のはがれは
この方法で失敗した事はありません♪



剥がれ

完全防寒


冬の寒い時期になると
左図の様な剥がれが多くなります。

造形エリア全体を防寒する事で
大分軽減できます♪

写真は段ボール製のケースに
スタイロフォームとアルミシートで
防寒ケースを作成したものです。


反り対策まとめ


まとめますと、 ABSの反りへの対策としては

①造形エリアの温度をなるべく一定に保つ

②ヒートベッドの温度を高めに設定し
冷却にかかる時間をゆっくりにする。

③ヘッダーのスピードを遅めに設定し
冷却にかかる時間をゆっくりにする。

④ノズルの温度を高めに設定し
冷却にかかる時間をゆっくりにする。
(↑ただしエッジの品質が劣化する可能性あり)

⑤Infillを低めにスライスし、ヒケ発生の強度を低下させる。

⑥そもそもヒケの発生しずらい形状データ作成(分割も含む)を心がける。

流石に(4年も使っているので)最近は反りで失敗する事はほぼなくなりました~♪


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「39 ABS樹脂の特性と反り対策」は以上です。

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